=繋いだ先に=








「だいぶ落ち着いたようだな」
 ベッドに横たわる自分の枕元に、先ほどから家庭教師の赤ん坊がなじみのカメレオンと戯れている。
 約一時間ほど前ひと悶着を起こし、立ち上がれるようにはなったものの、大事を取ってもうすこし寝ておけという話になった。
 もしかしてアレも計算のうちなんだろうか……。
「おまえの行動パターンは読みやすいからな」
 ほら、何も言わなくても全部ばればれだ。
「だからと言って横着していいとはいってないぞ。ちゃんと言いたい事があるなら話せ」
「リボーンが先に読んじゃうんじゃないか…」
「うるさいぞ、ダメツナ」
 はいはい、すみません。
 ちょっと拗ねて顔をそむけてみるが、どうせ何の意味もない。
 本当はもっと他に伝えたい事があって。
「……さっきは、ごめん」
「何のことだ」
「俺リボーンの話最後まで聞いてなくて―――でもちゃんと説明しないリボーンも悪いと思うけどね」
「言うようになったな」
 にやりとあのいつものニヒルな笑みはここ10年後の世界に来ても健在だ。
「気がついたらリボーンとは1年半以上の付き合いだもん」
 そうしてふとある可能性に気付く。

 10年後の自分はおそらく殺されていて。

 家族の安否も分からない。

 大切な友人の家族も犠牲になった。

 アルコバレーノの存在しないこの世界は、まさに自分の未来で。

 ただ、そんな思いもしない突然な事が、元に戻ったそのときに起こらないとも限らない。
「ねえ、リボーン」
「なんだ」
「手、つないでいい?」
 なんだ? と赤ん坊が首を傾げる。
 ねえ良いでしょ? とただ綱吉はお願いするだけだ。
「……このスーツあまり触り心地は良くないんだぞ」
 それは多分謙遜。
「いいよ」
 それでも良い。そこにいてくれるなら、それで良いよ。
 家庭教師は何も言わず右手を差し出してくれた。
 小さすぎるその手をぎゅっと掴み、京子たちが呼びに来るまでは眠っていようと思い目蓋を閉じる。


「ツナくん、リボーンちゃん、ご飯……ってあら?」
 食事の用意ができたので京子は綱吉とリボーンを呼ぶため医務室へと顔を出したのだが、覗いてみると綱吉がまた眠りの世界に入ってしまっているようだった。
「リボーンちゃん」
「ああ、心配するな。ちょっと休んでるだけだからな。すぐに起こしてそっちに行かせるぞ」
「でもツナくん……」
「大丈夫だ。ツナはなんと言っても大物だからな。これくらいはワケないぞ」
 余裕綽々のリボーンの笑みを見ていると、なんだか本当に大丈夫な気がしてくる。
 うん、じゃあ待ってるね、と京子はキッチンに一旦戻ることにした。
 踵を返そうとしたときにふと気付く。
「二人って本当に仲良しなんだね」
 見ると綱吉がリボーンの手を掴んだまま眠ってしまっている。
「まあな」
 世界最強の師弟なんだぞ。
 冗談か本気か分からないリボーンの発言に、京子はただすごいね、と笑みをこぼすのだった。

 悪夢ばかりのこの世界に、せめて目覚めたときは生きている証を感じたいから。

 今この手は決して離さない。




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補完にもなってない気がします。
うちのリボツナは本当に相思相愛です(笑)