=女心=








「ほら、リボーンちゃん、これなんかどうです?」
 バスアンドソープジェル! バスに入れると粟が出るんです〜。
 こっちのファンデーションは某ブランド店の新作の色なのよ。
 この前ミラノでお買い物してきたときに絶対似合うと思って買ってきたワンピース!ほら絶対似合ってますって。
「…………」
「どうしたの、リボーン」
「はひ?」
 いや、確かに今自分自身も女性の”端くれ”ではあるが、だからと言ってここまで唯一人の為に準備をしてくれるというのはどういう心境なのだろうか。
「……ていうか、てめえら暇持て余しすぎだ!!」
 ダンッ! とリボーンの左足がローテーブルを踏み鳴らした。
 きょとんとする熟年女性二人組み、ビアンキとハルである。
「失礼ね。ちゃんと仕事はしてるわよ」
「そうですよ〜。頑張って時間作ってお買い物に走ったんですから」
「俺はそんな事頼んでない……」
「でも『デートに何着てったらいいと思う』って聞いてきたのはリボーンの方よ」
「そりゃ聞いたが……ってわざわざ買ってくるか? ていうか買いすぎだ!」
 少女が怒るのは、至極もっとも。
 部屋の机やら床やらを埋め尽くすのは並べられたドレス20着、化粧品30品、その他美容に関するものも多々置かれていた。
 ああ、この床一体何色だったっけ。そんな同でも良いことを考えてしまったリボーンは脱力して、ソファに座り込む。
 そもそもこの二人に頼んだのが間違いだったのだろうか。
「参った……」
「もう、なんなんですか。初めてのデートでしょ、ツナさんと!」
 一番良い女を見せたくないんですか?
 この一言にリボーンはピクリと肩を揺らし、目線をハルに向けた。
「……見せたい」
「だったら徹底的にやりましょう!」
 ツナさん引き落とし作戦です!
 オ――ッ!!
 ちょっと言葉の使い方を間違っているような気がしないでもないが、とにかく彼女達が(なぜか)懸命になってくれているのが分かり、がらじゃないなと思いつつ、当日の衣装を選び出した。

 デートをしよう、と言われたのは2週間前のこと。
『お休みが取れそうだから、ミラノでデートと行きませんか?』
 おどけた口調で誘ってきたのは、ドン・ボンゴレ、沢田綱吉。
 ドンの予定スケジュールなんていくらでも変わるし、2週間後なんて本当なのかと疑いたくもなってくる。
 ドタキャンされる可能性が高いが、それでもレバンネには大切なことだった。
 実のところハルの言った事は少女の本音をついていた。綱吉に自分の一番いいところを見てほしい、なんて、好きな男の前なら当たり前だ。
 だから二人に相談してみた。
 どうしたら、もっと自分を綺麗に見せれるだろうかと。
 それが夜を徹しての彼女達の衣装選びとなった。

 後日、上機嫌な綱吉と、これまた上機嫌な(綱吉が分かるくらいの)笑顔を見せるレバンネの姿を尾行して回る二人の女性がいたとかいなかったとか。
 それはまた別のお話。




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やっぱりボンゴレ暇そう☆