=コロネロ=








 慌しい日々もようやく落ち着きを取り戻し始めた。
 決められたはずの”未来”が修正され、今自分は生きてイタリアにいる。
「10代目、今日の書類はこちらになります」
 入室の許可を求める声に「どうぞ」と返すと高さ30センチほどの紙の束を両腕に抱えて獄寺が入ってきた。(ドアは執務室の警護に当たっている部下に開けさせた)
「あれ、今日は少ないね」
「もうだいぶ整理されましたので、今日はこれだけです」
 勃発的な事件が起きなければですが、と一言加える右腕に綱吉は苦笑いで返すしかなかった。
「何もない事を願うよ」

 さらさらと印刷紙にペンの走る音がする。
 リボーンはこの音を聞きながら愛銃の手入れをするのが好きだった。
 執務室の中央におかれている客人用のソファだが、もっぱら使うのはリボーンただ一人である。定位置に腰を下ろし、持ち込んだトランクを開けるとそこから取り出した銃器を分解する。帽子をテーブルの端に置くと、一つ一つを丁寧に検分していくのだ。
 綱吉とリボーン、互いに何も言わなくとも時間が静かに流れていく。
 今日もそんな一日。

 に、なるはずだった。

 突如地響きが足元を揺らしたかと思うと、『果てろ!!』と聞き覚えのある口癖が執務室からも覗ける庭園の方から聞こえてくる。
「隼人?」
「なにやってんだ、あいつ」
 二人揃ってベランダに飛び出すと、視界に入ってきたのは直径役10メートルのクレーターだった。
「ああああっ、あそこ確か整備したばっかりの!!」
「またカルロに叱られんな、お前」
 カルロとはボンゴレが所有する敷地のほぼ全てを管理する庭師で、8代目の時からボンゴレを知っているというかなりの古株だ。子供、老人は大切にするという信念を持った綱吉が彼に対して低姿勢になるのは当たり前のことで、権力中枢に位置しない分、逆に最も頭の上がらないのが庭師カルロだった。
 彼を怒らせたらすっごい怖いんだぞ! 最悪だーっ、と頭を掻き毟るドン・ボンゴレにリボーンは心からの同情を送った。
「あそこで騒いでんの、お前の右腕と筋肉馬鹿だな」
 ああっ? と綱吉も目をやると確かに見慣れた銀髪と、同じくなじみの金髪の青年の姿が目に入ってきた。
 向こうもこちらに気づいたらしく、「よ」と右手を上げて挨拶してくるではないか。
「なんだイライラしてんな、カルシウム不足かコラ」
「誰のせいだよ!!」
「とっとと上がって来いよ、お前」
「すぐ行くぞコラ」
 応えてフフンと笑みを返したのはリボーンと同じく、”元”アルコバレーノのコロネロだった。

「お前がここに居るって事は京子ちゃん、こっちに来てるの?」
 リボーンはさっさと広げていた銃器をトランクにしまい込み、一変してそこはティータイムの風景に変わった。
「おう、来てるぞコラ。今は了平がついてるからな。何も心配はいらねぇぞコラ」
 アルコバレーノの呪いが解け、年相応に体が成長したコロネロは、どこぞのアクション映画に出てきてもおかしくないくらいに端整な顔立ちとスタイルを持ち合わせていた。ファルコは餌でも探しに行っているのか、彼の肩には止まっていない。
 現在、師弟の縁で笹川家の(特に京子の)用心棒として日本をホームグラウンドとしていた。その彼がここに居るという事は、十中八九、京子がここイタリアに居るという事である。
 なら良いや、と思いかけてまてまてと綱吉は頭を振る。
「それにしてもなんでコロネロはうちに来たわけ? 一緒にイタリア観光してくれば良いじゃない」
 そりゃそうだ、とリボーンも頷く。
 いや、まあ、そりゃそうだがよ、となぜだがコロネロの歯切れは悪い。
 はて? と綱吉とリボーンが首を傾げるが、ま、とりあえずアレだ、とコロネロはぽんと掌で膝を鳴らした。
「スカルの野郎が珍しく面白いもん作ってやがったからな。いっちょ試してやったんだぞコラ」
「試すって……」
「人間バズーカだ」
「面白そうだな」
「もちろんだぞコラ」
 だんっ、と綱吉の両手がテーブルを鳴らす。
「他でやって来いお前ら―――!!」
 そこで『危険だからやめろ』とはおっしゃらないんですね10代目、と横に控えていた獄寺は後で山本にぼやいていたとか。
 何はともあれ、本日もボンゴレは平和である。




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リボツナじゃないよ。コロネロ出したかっただけじゃんね☆
だって二人は一緒に居るだけでリボツナ成立するんです。

ちなみにコロネロがボンゴレを訪問した本当の理由はリボーンの様子見でした。
彼は他の虹っ子たちとはちょっと違う為にコロネロも心配なんです。頭突きする仲だし☆