=いつも一緒=








 ボックスが開き、現れたおしゃぶりを手にラル・ミルチは部屋を出て行ってしまった。
 なにやら彼女もそしてリボーンも訳ありな様子を見せるのだが、それが何のためかは綱吉には分からなかった。
 それよりも今は炎を出せたと言う事に友人二人が沸きかえってくれている。
「良かったな、ツナ」
「流石です! 十代目!!」
「う、うん」
 えへへ、とはにかんでみせる綱吉に山本が尋ねてきた。
「ところでさ、お前の護りたいもんってどこまで入ってんの?」
「え?」
 よく質問の意味が分からなくて綱吉は首を傾げる。
「いや、ツナだったら多すぎて大変なんじゃないかとか思ってな」
「野球バカにしちゃまともな事を聞くな」
「なんだよ、野球バカって」
 本当の事だろうが! とまた一方通行的な言い争いになりそうな二人を制し、綱吉はうーんと唸る。
「最初に思い浮かんだのが京子ちゃん、ハル、イーピン、ランボ……」
 母さん、と父さんは別にいいや。
 獄寺君や山本もそうだし、了介さんとか雲雀さんも無事だといいな。
 あとバジル君に……あー、ヴァリアーとか思い出しちゃった。
 学校の友達も狙われてるんだろ。みんな大丈夫かな……。
「……どんどん広がってきた。俺って結構友達多かったんだなぁ」
「やっぱ大物だな、お前」
「そ、そう?」
「そうっすよ、十代目!」
 ただ自分の思う人たちを思い浮かべているだけなのだが、それが大物といえるのかどうか綱吉には疑問だ。
 でもよ、と山本は更に尋ねてくる。
「なに?」
「そこにこいつは入ってねぇのか?」
 は? と山本が指差す方向を見ると、そこにちょこんと立ちんぼの赤ん坊。
「えっ、リ、リボーン!?」
「だってこいつも赤ん坊だぜ」
 えーと、と綱吉は悩みだした。眉間に皺を寄せて考え込んでしまったので獄寺が山本にまた怒鳴りだす。
「なにいらねぇこと十代目に考えさせてんだ」
「えっ、だってお前も思わね? いつも一緒にいるのにさ」
 山本にしてみれば純粋なる疑問であって悪気のあったものではない。
 それは綱吉も分かっているので、もう一度ちゃんと考えてみる。

 そもそもリボーンに対して自分が護るという感情は必要ない。
 なんといってもこの赤ん坊は自分の家庭教師であり、まだまだ自分が彼を超えることは考えられない。
 護るといいながらいつだって護られた。
 今だって、ちゃんと護ってくれている。
 生徒としてはまだまだな自分。

 でも、それでも、と綱吉は考える。

 俺にとってリボーンは―――。

「ずっと横に居てほしい人、かな?」
 かな、は余計だぞダメツナ。と即効で教師からダメ出しされた。
「え、居てくれるの?」
「さっきも言っただろ。甘えた事言うな」
「はいはい」
 ちぇっ、拗ねたような顔を見せる綱吉は実際の年よりも幼く見えてしまう。
 かわいいなぁ、なんて山本も獄寺も思ったことは、本人が更に拗ねてしまいそうなので内緒である。
「それに」
 おや、続きがあったのか。
 口を開いたリボーンに三人が目を向けた。
「俺はお前の家庭教師だからな。いつも一緒に居るだろ」
「……うん!」
 ぱあっと広がる綱吉の満面の笑み。

 やっぱこの二人、最強だよな。

 この二人が居たから自分達は綱吉の下に集えたのだ。
 獄寺と山本は一抹の悔しさと共に、妙にそれを納得していた。ただここに居られる事を何より喜び、そして本人のあずかり知らぬところで綱吉を護るのだと、それぞれが胸の中で新たに決意する。


 護りたいだなんておこがましい事はいわない。

 護ってなんて甘えた事もいわない。

 ただ同じ道の上でなくとも、共に進み続けれたらと願う。

 君と居られる未来が欲しい――。




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いつだって対等でありたいと思うんです。