=不器用な人=








 しばらくぶりの再会に涙腺がゆるむのはどうしようもないと思う。
 次々と告げられる衝撃の事実に綱吉の頭は途中からかなり追いつけていなかった。
 とにかく残りの守護者を探すんだ、と家庭教師に言われた以上、その為に動き出さなければならない。

「とりあえず、まずはこっちな」
 獄寺と山本が綱吉の前を進む。訪れた隠れアジトの上が並盛だという事は分かったが、全てが10年前と同じとは限らない。またこのアジトを拠点とするのなら当然のように造りを知っておかないといざという時に動けなくなる。山本から説明を受けながらアジト内をずっと回っていた。

 思えば不安な事だらけだ。
 現れたモスカは相手ができないくらいに強いらしい。
 ボンゴレの人間、それに関わった人間も含め全てが狙われている。
(京子ちゃん、大丈夫かな……)
 最初から頭の中にあった懸念がずっと綱吉の中でぐるぐると回っていた。
 彼女にもしものことがあったらどうしよう。
 そんなの絶対にイヤだ。
 大事な人なのに―――。

「京子は無事だぞ」
 はっとした。
 人の顔を観てもいないのに告げてきたのは我が家の家庭教師様だ。
「リボーン?」
 綱吉の腕に抱えられる状態で移動中のリボーンには、同じ方向を見ている綱吉の顔は見えない。けれど考えている事は分かっているようだ。
「ちゃんと護衛も付いてるらしいからな。完璧に安全とはいえねえが、まだ無事ではあるらしい」
 だからそんなに怖がってんじゃねーぞ。
 発せられる言葉が全て綱吉の胸の奥に染み込んでくる。
 ぎゅっと思わず腕に力が入った。
「おい?」
「無事で良かった」
 リボーンが無事で、本当に良かったよ。
 今はただそれに感謝する。
 ほんの2,3日の事がなんと長い時間に感じられたことか。
「できたらもう、あんな思いはしたくないな」
 だから傍に居てほしい、とは言葉にはしない。言ったところで手が出るか、言動で切り捨てられるか、はたまた鍛えなおしとどんな無理難題を言われるかも分からない。
 でもきっとリボーンにはちゃんと全部が伝わるだろう。なんせ彼には読心術がある。
 彼がすぐ傍に居ると言うだけで得られる安心感に、今だけは心を預けておきたかった。
「……やっぱりダメツナだな、おまえは」
「うっ、酷い…」
「そんなんでボスが務まると思ってるのか」
「だから俺はマフィアにはならないって」
「そんな選択肢はおまえにはないぞ」
 俺が教えてやってんだからな。
 リボーンの小さな手がぐっと綱吉の腕を掴んできた。

 あったかいな。

 マフィアになんか絶対なるもんかと、胸の内でいつもと変わらぬ決意を吐きながら綱吉も腕の中の存在を抱きしめ直した。
 実は彼って不器用だから。
 本音を本音として言えなくて。
 冗談交じりで結構本当のことを言ってくるから。
『だきしめて』
 この腕を自分は離すものかと、綱吉は新たに決意する。




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原作より。あのりぼたんの蹴りに久々のリボツナを見ました(笑)
頑張れツナ!