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=秘密=
なんか非常に寂しいなぁ。 なんて心の中で呟きながら綱吉は前方に目を向けた。 現在邸の執務室にて山のような書類の決済確認に追われているこの男、名を沢田綱吉と言う。かなりの童顔で街に出ると勘違いされる事が多いのだが、すでに20歳を超えていた。イタリアでも名を馳せるファミリーのドンとしてジャッポーネは、勤勉に業務をこなす毎日だ。 今日も今日とて例外にもれず、恐ろしい枚数の書類と格闘中である。 自分の座る机の向こうには一応接客用ソファ一式が置かれており、しかし今そこを占領している男は客でもなんでもない。 男は向けられた視線に気付くとこちらをまっすぐ見返してきて「このダメツナが」と吐き捨てた。 「まだ俺なんにも言ってないんだけど」 「言う必要ねぇだろ。おまえのその頭は未だに学習できねーのか、ああ?」 そこまで言う!? 声を荒げて抗議するも相手が悪すぎというもの。 綱吉が13歳のときから家庭教師としてついていたヒットマン。マフィア界最強と謳われるアルコバレーノ7人の内の一人で、更にその7人の中でも真に”最強”の名を冠するのが彼である。 リ・ボーン。 ”復活”という神をも恐れぬ名で呼ばれる彼は、だが綱吉にとっては恐怖の対象ではあっても、忌み嫌う存在ではない。 むしろその逆である。 「昔はあんなにちっちゃくて可愛かったのになぁ」 赤ん坊であった彼を知っている綱吉にしてみれば、今現在自分の身長を超えて大きくなってしまった相手に対する心境は複雑である。 深い感慨とともに吐き出されるため息は、リボーンの前までは届かず。 「ふざけるな。そもそもアルコバレーノ捕まえて”かわいい”とかほざくのはお前だけだぞ、ツナ」 「どうして? 本当に可愛かったんだよ」 「俺の姿見るたびにビクビクしてたのはどこのどいつだ?」 「まだそれを言うのか!」 うるせぇ、ダメツナが、と結局最後には一蹴される。 なんだかな、と書類に集中できなくなって綱吉は腰を上げた。 「おい、仕事はどうした?」 「休憩」 立ち上がるとそのままリボーンの横に座り、相手の肩に乗っかっていたカメレオンのレオンを自分の掌に乗せる。 「ねえ」 「なんだ」 「ちょっと肩借りてもいい?」 「……ちょっとだけならな」 「やっぱりリボーンってケチだよね」 「なんだと」 「5分経ったら起こしてね」 思い切り顔をしかめる相手を無視して、ことんと身体を寄り掛けた。 「ちゃんとそばにいてよ」 おやすみとは違う言葉に、はっとして相手を見るリボーンだったが、綱吉は一瞬で寝入ってしまい「ああ」とも「いや」とも返せなかった。 「ツナ……」 ちゃんと傍にいて。 綱吉の言葉がなんて痛い。 「ツナ」 彼は信じているのだろうか。 「ツナ」 自分が本当にいつまでも綱吉の傍に居るのだと。 「……綱吉」 残された時間があまりにも短いことを、当の本人が誰よりも分かっている。 「ボンゴレの、超直観か……」 それでもぎりぎりまで彼の傍に居たいから、リボーンは黙し続けるだろう。 もう自分に銃は握れないなどとは、口が裂けてもいえない。 撃てない訳じゃない。けれど微妙に的が外れる。指先が震えるのだ。 それだけで、ヒットマンがヒットマンで無くなる理由は十分なのに、自分はまだここに居る。 誰にも言ってはいないけれど、だがきっと綱吉にもなんらかの情報で認識されているのだろう。実際この2ヶ月間、仕事は一つも回ってこなかった。 『そろそろ皆にも独り立ちさせなきゃ』 なんて言う綱吉の笑顔は、自分だけが知る自然な綱吉だったから、その時は疑わなかったけれど。 綱吉からお役御免といわれる前に、ここを離れなければ、と思う。 言われてしまったら、自分は本当に立ち直れない気がするから。 「綱吉……」 「ん……」 身じろぐ綱吉が倒れないように手をかけると、とろんと目を開けた綱吉がこちらを見つめている。 「ツナ?」 起きたのか、と声に出そうとしたのに、綱吉がソファに押し倒す形で抱きついてきたものだから、リボーンもそのまま背中を沈める形になった。 「おい、ツナ!」 抗議の声もきっと届いてはいない。すうすうと気持ちのよい寝息がリボーンの耳に伝わってくる。 「ったく、本当に」 いつまで経ってもダメツナだな。 言い放つ言葉とはうらはらに穏やかな表情で、リボーンもそのまま眠りに付く事にした。 ********** 時間切れ。ていうかやっぱ補完書くべきよね。 やっぱりりぼたんがでかいと思ったらリボツナになっちゃうよ! リボツナでも実は精神的ツナリボなんていうのが一番の理想なんだけど!! 戻 |