=母=








 その日届けられたのは綺麗なピンク色のカーネーション。差出人はイタリアに移り住む大切な愛娘からだった。
 毎年母の日にはカーネーション。本数は毎年一本ずつ増えていく。今年届けられたのは17本だった。
「そっかー。リボーンちゃんももう17歳になったのね」
 京子はそれは嬉しそうに微笑みながら、遠く離れた異国の地に思いを馳せた。


「リボーン、京子ちゃんからメール来てるよ」
「マンマから?」
 シャワーを浴び終わってバスローブを羽織ったレバンネが、わしわしと髪の水滴をふき取りながら近づいてくる。
 夕食を終えて綱吉の自室に戻った二人。レバンネが先にシャワーを浴び、綱吉がその間にノートパソコンを持ち出して、個人的に送られてくるメールのチェックをしていた。綱吉が腰掛けるソファの横にレバンネも腰を下ろす。
「うん、お花ありがとう、だって」
「ああ」
 レバンネには本当の意味で母親はいない。だが綱吉の計らいで京子が里親となった経緯があり、ヒットマンであったことの記憶を取り戻した今でも「京子」ではなく「マンマ」と呼んだ。
 毎年、母の日にはカーネーションを贈る。自分がとった年の分だけ送り、自分が成長した証を届けるのだ。それは京子自身の要望でもあった。
「俺がこうやっているのは京子のおかげだからな」
「そうだね」
 綱吉も嬉しそうに笑う。
 ふとディスプレイに向けていた視線を横に向けると、レバンネがじっとこちらを見ていた。
「リボーン?」
「ツナのおかげだぞ」
 俺がここにいるのはツナのおかげだ。
 暗闇を思わせる漆黒の瞳がじっとこちらを見つめている。それを見ると不思議と心が落ち着いた。夜に抱かれるってこんな感じなのかな?
「ツナ?」
「リボーンがいてくれて良かった」
 脈絡のない返答にレバンネはクッと眉を顰めるが、後はため息一つ。
「なんだそりゃ」
「えー、思ったことをそのまま言っただけだよ」
 僕のところに還って来てくれてありがとう。
 こちらが恥かしくなるような事をさらりと臆面もなく言い放つ綱吉に、ほんのり顔を赤くさせた少女は、ダメツナめ、と呟きながら相手の唇に喰らいついた。


 全ての愛しき母たちへ、感謝の心を、言葉に、形に―――。




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全然ツナリボじゃないけど、気付けば今日が母の日だったんで。