=雨の守護者=








 きいいいん。
 鋼のぶつかる音がいくつも山林の間に響いて、邸の一番奥に控えている綱吉の部屋にまで届いてきた。
 この音の繰り返しが一時間ほど前から続いている。
「仲良いなぁ、あの二人」
 心底羨ましそうに呟くのはこの邸の主、沢田綱吉である。
 本来なら机に向かって書類を捌いているはずなのだが、どうしても外の音が気になってついついベランダに出てしまったのだ。
 ここはイタリアのシチリア島の一角。邸の周辺の見渡す限り見える山林は全て彼の所有物となっている。
「だったらお前はザンザスに相手してもらえ」
 と言い出すのは綱吉の隣に常に控えている世界一のヒットマンだ。全身漆黒のフォーマルで決めるその『青年』は綱吉と並ぶと10センチ以上は身長が超える。まだ『赤ん坊』だった頃のほうが偉そうでも可愛げがあったのになぁ、と彼を見るたびに綱吉は心底ため息をつくのだ。
 そして彼が言い出すことと言えば、決まってろくなことがない。
「冗談でも止めてよ、リボーン。それこそザンザスとやったんじゃ邸を何回立て直しても間に合わないよ」
「さっきお前の事、探してやがったぜ」
「ぎゃ! 冗談じゃないよ! まさかこっちまで来ないだろうね……」
「あいつは暴君だが、仕事の邪魔まではしてこないぞ。そもそもこの邸を歩き回る事事態苦手なはずだからな」
「だったらいいけど……」
 はあ、と深くため息をつく綱吉とリボーンの眼前に、先程から手合わせを続けていた山本とスクアーロが姿を現した。
「う゛おおい! そろそろそのなまくら刀、へし折ってやるぜ!」
「いや、これ親父から貰ったやつだから、壊されると困るんだけどなぁ」
 泣く子も黙るスクアーロの鬼のような気迫も、山本にかかると軽くどこぞへと流されてしまう。
 スクアーロの頭上からの一撃を横に払うと、山本も相手の喉下を狙って切っ先を突き出す。当然それはたやすく払われて、互いに正面から向かうと、がちっと刃をぶつけて足を止めた。
 相手を目を睨む事、僅か30センチの空間である。
 ちょうどいいかな、と判断した綱吉は彼らに声をかけた。
「おーい、山本、スクアーロ、お茶の時間なんだけど、上がってこない?」
 綱吉の声は良く届く。
 あ゛あ゛? と凄むスクアーロと、マジで? と喜ぶ山本。
 正反対の雰囲気なのにきっと考えてる事は同じ。
『じゃあ一服したら、もう一手合わせ』
 駆けて邸の中に入ろうとしてくる二人に、廊下は走っちゃダメだよ! と綱吉は無意識に叫んでいた。

 どこの幼稚園だここは! と家庭教師に後でお説教を喰らうのはもちろん沢田綱吉である。







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雨の守護者、大好きです! でもグッズにあるリングは買ってない……どうしたものか☆